「キルケーの毒草」 相原大輔 (カッパノベルス)

大正の世。作家の鳥部は失踪した知人の手がかりを求め桐嶋男爵邸を訪れる。
毒物を収集するなどの好事家ぶりを見せつける男爵。特権意識に彩られた華族の人たち。
その中で恐るべき連鎖殺人が…。

時代小説としての筆致や重厚さに関しては、前作「首切り坂」からさらに進化。
もう堂々たる書きっぷりで、ノベルス版500ページあまりの長編をがっちり仕上げてきました。
いやー、文字がつまってて読むのにかなり時間がかかったんだけど、面白かったなあ。
話は長くても冗長さはあまり感じない。
毒物や歴史上の悪人・悪女の薀蓄をまじえつつ、しかもそれをうまいこと事件とつなげていく構成。
探偵役の大島に語り手の鳥部、桐嶋男爵など、好事家たちの饗宴と退廃という雰囲気もばっちり。
いくつかバカミス風味な部分があって、お茶目で微笑ましいのと(p.461の絵解きは最高。そういやファンタジー系の書籍でその逸話読んだことありますわ)、
事件の多重性が面白かった。
本格ミステリとしても立派なものだと思う。
2作目でこれだけのものを書いてくるなんて、カッパワン登竜門デビューは伊達じゃなかったんだなあ。
1期生に比べて小粒、という評価は改めさせていただきます。