カーター・ディクスン 「弓弦城殺人事件」 (ハヤカワ文庫HM)

古い甲冑や武器の類を蒐集することを趣味としていたスタイン卿が殺された。
紛失したと騒ぎの種になっていた弓弦を首に巻きつけて…。
 消えた弦や篭手が殺害手段に関わっていたり、甲冑の鎮座している部屋で死体が転がっていた!な展開を見せるわりにはどうにも怪奇風味が薄め。
視点人物のテヤレイン博士をはじめとして理性的な人物ばかりなのが祟ったか。誰か一人くらいは「甲冑が殺したんだ!」とか叫んで盛り上げてくれてもよかろうに。
ユーモラスな要素も皆無で、読み進めるのが少々退屈な作品ではあったのだけど、真相解明のカタルシスで多少の不満は解消されてしまうのがミステリ者の性。
(密室の)抜け道と証言の不確実性をそう使ってきたか。にゃるほろろーん。
探偵役は冗談なんて一言も口にしなさそうな雰囲気を漂わせるゴーント博士。陽性でお喋りなH.Mとはまた対極的なお人だこと。