「平井骸惚此中ニ有リ 其四」 田代裕彦 (富士見ミステリー文庫)

大正十二年九月、後に関東大震災と呼ばれる災害が帝都を直撃。
不在の骸惚先生の代わりに、平井姉妹を連れ地震と火事から逃がれる河上君の前に現れたのは、
気になる年上の女性と、殺人事件。

おいこら編集部。カバー折り返しのあらすじ、はつ子嬢の漢字間違ってるよー。
撥子じゃないよ。さんずいに發ですよう(旧漢字なので普通の辞書では出ない)。
暗い話にならないよう作者が「L.O.V.E」を叫びながら書いた……というだけあって、
序盤から河上君と涼嬢がラブコメしてるわ、はつ子嬢ちゃんの健気なかわいさは全編あふれまくりだし、
肝心の河上君は平井姉妹というものがありながら年上の眼鏡っ娘にときめいたりと、もう大変。
震災を舞台にしつつも、シリーズの魅力は損なわず、しかもミステリ(殺人事件)を書こうという、
なかなか難しい命題をL.O.V.Eと河上君の奮闘で乗りきった力作ですな。面白かった。
1巻あたりと比べると河上君も随分と頼もしくなったもんだなあ。
ミステリ部分もそこそこの出来。謎はさして込み入ったものではないのだけど、解き方がしっかりしてるところを評価。
見落としていた伏線が1つ、わからなかった謎が1つあって、あいやそれは気付きませなんだと感心。

既刊感想→http://www.big.or.jp/~pon/book/tashiro.htm