「海の底」 有川浩 (メディアワークス)

横須賀を巨大な甲殻類の大群が襲った。人々を襲い食らう巨大エビ・レガリス。
警察は、自衛隊は、街と市民を守り抜くことができるのか。
逃げ遅れ、潜水艦に孤立した若い自衛官2人と子供たちの運命は…。

人間の相手が巨大人食いエビであるためか、ほのぼのとした雰囲気のあった前作「空の中」に比べると作品の空気は重め。
あんまり気楽には読めないなあ。
でも、話の牽引力は抜群。読み始めると止められない止まらない。
厳しい状況の中で巨大エビに必死で立ち向かう機動隊の人たち、
警察の限界や日本の危機管理体制に歯噛みしながらも後方で事態の収束に向けて着実に動いていく明石と烏丸。
怪獣映画風の設定で展開していくところは単純にワクワクするし、
警察や自衛隊の運営については現実に近しいかたちで描いていて政治的な駆け引きもあったり、
警察や自衛隊の職業意識の描き方がかっこよかったりとか、パニック小説における群像劇な物語が非常に面白い。
それから、もう1つのメインストリームである潜水艦の方の話も、子供たち同士の確執やなんかがあって読んでて痛々しい気分にさせられてしまうものの、
最終的にはおさめるところにおさめていく筆運びで、これもなかなか良かった。力作。

「空の中」感想→http://d.hatena.ne.jp/kirisakineko/20041126