「銀の檻を溶かして 薬屋探偵妖綺談」 高里椎奈 (講談社文庫)

深山木薬店という怪しげな薬屋。そこの店主・深山木秋と助手の座木とリベザルの正体は……実は妖怪である。
薬屋は表の商売、裏ではそっち系のトラブルを引き受ける探偵稼業をやっている彼らのもとに、やってきた依頼とは…。

ノベルス版の発売が99年。約6年でようやくの文庫化。ということで、これを機に再読していこうかなと考え中。
さすがに初読が6年も前だと事件の概要以外の話の細かい部分はほとんど忘れてて、新作のような感覚で読んでしまえたのは良かったのか何なのか。
高里氏の作品をデビューの頃から読んできた身としては、いい意味でも悪い意味でもデビューの頃から全然変わってないというイメージがあったのだけど、
今の「薬屋探偵」と比較するとかなり文章が軽い…というか若い。
最近の作品はもうちょっと堅い表現や字句を好んで使ってるような。
キャラクタも秋と座木以外はまだ手探りで書いている感じがあって、総和くんとか高遠にちと違和感あり。
高遠って、「雪下に咲いた日輪と」じゃ準主役なのに、初登場ってこんな扱いなんだっけ。
リベザルはそんなに変わってないのね。原形に戻ったり、何かと泣きそうになってるあたりのリベザルのかーわいいことかあいいこと。
お話の方は……実はシリーズの中ではあまりパッとしない話で、まあ悪くないという程度。少女小説系ミステリーとしてはそこそこの出来といったところ。
ただ、死んだ少年の家族の話だけなら気持ちのすれ違いが生んでしまった悲劇としてシンプルにまとまりそうなのに、
親族皆殺し犯が絡むことで終盤の雰囲気をぶち壊しにしてるような気がしてしょうがないのが最大の難点。
初読のときもそのあたりに座りの悪さを感じたんだけど、再読してもやっぱり受けつけなかった。
…とまあ、そんなこんなで再読終了ー。
文庫版表紙にてついにイラスト化された3人組はなかなか良いんじゃないかなーと思うざます。
なんといっても座木の佇まいがエロい! 無意識の女殺しという設定がその憂いの横顔に出てるよ!w
 よしよし、続刊で高遠や葉山くんが表紙を飾るのが楽しみだなあ。…え? 葉山くん表紙登場はありえない? そそそそんなー。

えー、薬屋好きとしてもう1つ。文庫化を機に「薬屋探偵妖綺談」を読もうなんて方がもしいれば、
この1作目だけで判断せず、ぜひ2作目の「黄色い目をした猫の幸せ」を読んでからシリーズの評価を下してほしいところ。
わたしがシリーズを読み続けようと思ったのは、そこでのリベザルなのですよーう。
それ読んで駄目だというなら諦めるから、後生ですから「黄色い目をした猫の幸せ」までは読んでっ。
リッパーさんからのお願いだっ。