「ふわふわの泉」 野尻抱介 (ファミ通文庫)

文化祭へ向けた科学部の実験中、浅倉泉と保科昶は偶然の落雷により新物質の窒化炭素を作り上げてしまった。
”ふわふわ”と名付けられたそれを量産し売り出していこうとする泉。やがて”ふわふわ”は世界に変革をもたらしていく…。

もし、こんな”ふわふわ”なる物質が発明されたら世界はどうなっていくのかなー、なんて思考実験を元に書いていったようなお話。
のほほんとした雰囲気で、かるーく読める中にSFな面白さがほどよく詰まってる良作。
”ふわふわ”誕生から、空中コミューンのエピソードをへて、宇宙進出計画へと、話がどんどん大きくふくらんでいく様がすごく楽しい。
画期的で便利なんだけど限界は存在する”ふわふわ”。それをどう扱って、組み立てて、より壮大なものを作り上げていくのか…。
なんかこう読み手にいろいろと想像の余地を与えてくれるところが素敵だなあとも感じたりして。
「太陽の簒奪者」と本作との共通点や書き方の違いなんかも興味深い。霧子の設定とその応答ぶりが特に面白かった。