「雷鳴の中でも」 ジョン・ディクスン・カー (ハヤカワ文庫HM)

人気女優であったイヴの婚約者が墜死してから17年。イヴの周囲に漂う不穏な空気が、再び悲劇を呼び寄せようとしていた。
知人の娘であるオードリーがイヴ・フェリアーに招かれたと知ったブライアンは、オードリーの身を案じ、イヴには近づかないよう説得しに行ったのだが…。

過去の墜死と似たような状況で繰り返された死。それは事件なのか? 事故なのか? 殺人ならば犯行方法とその犯人は?
 人物関係や各人の事情・心理状況に真相のキーを秘すタイプのミステリで、わたしが怪しいと睨んでた人物はまったくの見当違いでした。あいたー。
おかげで犯人や真相にびっくり。てへへ。
でも、フェル博士も秘密主義は大概にして、もう少し情報を与えて欲しいところ。
特にイヴ・フェリアーの元ダンナについて教えてくれれば、真相を推察するとっかかりになったかもしれないのにー。
ミステリ的にはカー作品のなかでは中くらいの出来なのかなという印象。
ヒロインの軽率な行動に主人公がやたら振りまわされてしまったり、錯綜した人間関係や最後に明かされる愛憎劇といった、濃厚なメロドラマ展開は面白く読めました。「仮面劇場の殺人」もそうだったんだけど、後期のフェル博士ものはメロドラマ風味が強いのかしらん。