「バクト!」 海冬レイジ (富士見ミステリー文庫)

教え子を救うために借金ギャンブル地獄に陥りかけた音無素子。
彼女が頼ったのは国定兄妹。3人の勝負の行方は…。
第4回富士見ヤングミステリー大賞<大賞>受賞作。

良くも悪くもインパクト大な「戦う少女と残酷な少年」(第1回大賞受賞作)
講談調な語り口+探偵小説なライトノベルという手法が目新しい「平井骸惚此中ニ有リ」(第3回大賞受賞作)と比べてしまうと、
小粒というか普通すぎるなあという印象があるものの、作品自体はそれなりの出来。
賭場を舞台に繰り広げられるギャンブル合戦というお話で、テンポも悪くないし、結構楽しんで読めたざます。
勝負のシーンがいまいち緊迫感に欠けてるのが惜しいのだけれど、賭場って怖ーと読み手に感じさせるくらいの迫力はあるし、
キャラががーっと熱くなって勝負にのめりこんでしまうあたりの描写はなかなかのものではないかと。

主人公と国定兄妹のキャラはまずまず魅力的。
素子ちゃんがバカのつくくらい正直で善人でピュアで…、そして頭悪い行動の数々。
あーもう、作中何度もとこちゃんあんたバカすぎです!とツッコミたくなったことか。
フォローするヒロト君とありす嬢も大変だあ。ははは。
でも、そんなところがかわいいと思ってしまったボクは負け組。

各章をはさむインターミッション・パートの下品なギャグになんじゃこのノリは…と思ってたら、これがミステリ的な仕掛けにつながっててビックリ。
何気に密室トリックもあるし、そうか! これも実はミステリーだったんだ! …なわけないだろー!