「霧の迷宮から君を救い出すために」 黒田研二 (ジョイノベルス)

事件に巻きこまれ怪我で動体視力を失ってしまった主人公。
見ることが出来るのは六秒ごとの静止画像。動くものは白い霧につつまれる。
襲いかかる悪意から、彼は自身と大切な人を守るために…。

主人公が元気に動き過ぎなために動くものが見えないという設定に説得力がどうにも感じられないのが最大の難点。
でも、そこをあまり気にしなければ、
見えなくとも頑張る主人公の必死さには感情移入させられるし、岸野君の台詞等いい話っぽい雰囲気もあって、お話としてはまあまあ良い感じ。
主人公が特殊な障害に翻弄される話というところで「今日を忘れた明日の僕へ」に近い雰囲気もあり。
黒田作品にしてはシンプルにまとまっている。恋愛描写は今回あまりうざったくなくはない。まあ相変わらずげんなりさせられるところはありますが。

終盤まではサスペンスな展開が主で謎解きやトリックは影をひそめているのだけど、終章でどかーんとやってくれます。
正直そこまでは、悪くないけど地味な話だなあ、なんて思っていたのが一気に引っくり返されました。
ぐはー、このトリックとオチのための設定だったのかー。
ミステリとしての評価はともかく、黒田研二節全開のオチは素晴らしい。
先月刊行の「幻影のペルセポネ」よりもこっちの方が好みかも。