「ネペンテス」 清水マリコ (MF文庫J)

強く動揺してしまうと世界によくないことが起きてしまう。自分自身だけでなく、周りの人たちにも悪影響を与えるようなよくないことが……。
幻想風味の連作短編集。

嘘つきの話と「ゼロヨンイチロク」のいいとこ取りみたいなところがあって、とても良い雰囲気。
トオが直接絡んでくる話を除いて、みんなラストがホラーじみたオチでちょっと怖い。
特に「青い目の少女」。ポイントとなるところはわりあいさらっと書いてるにも関らず、強烈にグロテスクな印象を与えてくれて、なんとも気持ち悪い。
そんな怖いエピソードの中で主人公の妹が無邪気に兄を慕ってる描写があったりして、これがまたえらく効果的なのでありました。
よーし、お兄ちゃん、まみのかわいらしさに萌え転がっちゃうぞー(←まんまと妹萌えにのせられる人)。
…ということで、副題は「いぬみみは妹につけておく」でいいですか?

”動揺するとよくないことが起きてしまう”のは、フツウじゃない運命なのか、偶然の結果とただの思いこみなのか。
主人公の周囲では不可解で怖い出来事がいくつも起きているし、明らかに人外の存在っぽいトオまで登場してくるのだけど、
主人公の自己規定がただの思いこみであることを否定できない気がするのは何故、とかなんとか思ったりもして。
妄想と復讐と過去の傷が交錯していく最終話でちょっと感動。