「水の迷宮」 石持浅海 (カッパノベルス)

水族館の館長あてに届けられた携帯電話。その電話に水槽への攻撃をほのめかしたメールが届く。
職員たちがその対処に追われる中、殺人事件が……。

あらら、期待値を高めすぎたかな。
前作・前々作ほどの特殊な事情ではないぶん、お話の牽引力が弱くて、ちょっと地味な印象を受けた。
本格ミステリとしては非常に丁寧な作り。
警察を介入させないための状況作りに関しては今回もなかなか説得力があるものになってるし、
状況や推理を積み重ねていく展開だとか犯人を特定するための論理と伏線はよく出来てて、そのへんは面白い。
ただ、良くも悪くも展開が素直すぎるかなあ。ミスリードされるところがないので、真相まで読んでも驚けるポイントがほとんど無いのがなんとも困りもの。

事件の背景にある計画とか故人の意志というものをどれくらい尊重するかでラストの評価がわかれそう。
わたしはちょっと気持ち悪い締め方だと思ってしまった。いい話っぽくしたいなら無理に人死なせなくてもよかったんじゃないかと。
まあでも、面白く読めたことは確かだし、丁寧な作りが良い本格だと思います。