「生首に聞いてみろ」 法月綸太郎 (角川書店)

彫刻家の遺作となった石膏像の首が斬られ頭部が持ち去られた。
ただのいたずらなのか、あるいはモデルとなった娘の殺害予告なのか!?

次第に明らかになる彫刻家とその周囲の人間関係、
石膏像の損傷盗難事件が一転陰惨な殺人事件へと。警察の捜査と綸太郎の推理が丁寧に描かれております。
まさに端正な本格ミステリという感じで素晴らしい。
後からあれってそんな意味があったのかーと感心させられるトリックの使い方や、
見かけの事件と見えてない部分の二重構造、エピローグまで読んでようやく判明する伏線の妙味などなど、さすが法月綸太郎と言うほかない程の上手さ。
そして、読了後に心に重くのしかかってくる事件の悲劇性。最後の数行のなんと痛切なこと……。