「誰もわたしを倒せない」 伯方雪日 (東京創元社)

総合格闘技におされているプロレス界を舞台にし、<最強>とは何かを問いかける連作短篇ミステリ。

カトリックがあったり、強烈なミスリーディングでまんまと一杯食わされてしまったりと、本格ミステリの興趣は味わえる作品になってました。
第三話の殺人トリックにまったく思いもよらなかったわたくしは、プロレス好き系ミステリ者としては失格ですか。どびっくりでしたよ。
プロレス界のえげつなさ…いろいろ伝え聞いたりネットで流れたりしてる噂話…が作品にがっつり取りこんであって、
ファンのはしくれとしては読みながら”そんなところまで書かなくても…”という複雑な心境になったりもしたのだけど、
そういう負の部分も最終的にはミステリとしての仕掛けやテーマの描き方に絡んでいくし、いいんじゃないかな。
プロレスをよく知らない人が読んで作品にどれくらい納得できるのかはちょっと聞いてみたいところ。

それと、解説は超充実。ミステリ界隈の流れをプロレスに見立ててるところは爆笑ものだし、
作者がそこまで意識して書いているのかという部分にまで踏みこんであって、解説大賞ってのがあれば投票したいくらいの出来。