「甲賀忍法帖」 山田風太郎 (講談社文庫)

甲賀と伊賀は400年にわたる宿怨の敵である。その争いの禁制が徳川家の世襲をめぐって解かれることになった。
巻物に記された甲賀者10名と伊賀者10名の殺し合いが始まる。人知を超えた異形の者、妖艶の術、殺しの技が炸裂する忍法決戦の行く末は!?

昔から「忍法帖」には多少の興味はありつつも、時代小説って堅苦しいきがするし、古くさかったり読みにくかったりするんだろうなあ…なんて先入観もあって、
今まで手にとる機会を逸し続けてました。すみませぬ。全然そんなことなかったです。
時代小説的リアリティだとか文学性だとかの堅苦しいものはまったく無縁の純粋娯楽小説でした。

ゴムマリ人間や吸血くの一等、異形の者から超絶忍法をもつ者までいろんな忍者が出てきて戦っていくというただそれだけの話で、
昨今のライトノベルでもここまでバトル・エンターテインメントに興じた作品を探すのはなかなか難しいんじゃないかなあ。
40年前の作品とは思えないくらい文章はしごく読みやすいし、キャラクタや忍法の数々は奇想天外で面白い。
設定が設定だけに*1救いのなさすぎる展開がちょっと厳しいところはあるものの、とても面白かったざんす。
美少年と描写されてた夜叉丸君の扱いにちと不満があったりなかったり、地虫十兵衛の異形ぶりが妙にかわいくて(正気?)、如月左衛門には心底むかついたりとか、そんな感じで。朧と弦之介よりも脇を固める忍者たちの方が潔くてかっこよかったなあ。

*1:山風の忍法帖って全部そうなんじゃないかという気がするけども