「忍法破倭兵状 忍法帖短篇全集3」 山田風太郎 (ちくま文庫)

山風および忍法帖初読み。

「忍法鞘飛脚」…某氏大絶賛(id:h-moto:20040617)の一篇。これは初心者が読んで楽しめるかどうか微妙。
わたしはたまたま冒頭のこれを後回しにして他の収録作でノリをつかんでからだったからよかったけど、最初に読んでもぽかーんとするだけじゃないかなあ。
異色の忍者がもっていた忍術とは何か?に焦点をあてていると、最後にあっと言わせられる、馬鹿話。

「忍法肉太鼓」…主人公・六波羅に与えられる使命にまずぶっとび、忍者たちのおかれた立場や非情な掟の描き方に嘆息し、ラストに打ちのめされました。
こりゃあ、すげーや。初心者はこれから入るのがよろしかろう。

「忍法花盗人」…これに出てくる真柄という少女が、山風流天然ヒロインの型なのかもしれぬ。

「忍法しだれ桜」…非情にすぎる、甘さのかけらもない創作姿勢には感服つかまつる。
こういうのを読ませられると、忍者萌えーとか軽薄なこと言ってられなくなっちゃいます。

「忍法おだまき」…SFっぽい。

「忍法破倭兵状」…史料の引用が多すぎて話のテンポが悪い。わたし的にはいまいち。ラストのまとめ方には感心するけど。

「忍法相伝64」…現代(といっても昭和30年代)を舞台にした番外編。パニックホラーっぽい出だしになってますな。

総評:面白かったなり。わたし的ベストは「忍法肉太鼓」。
この忍法を受け継いだのが上遠野浩平ビートのディシプリン」(電撃文庫)ではなかろうかと思います。
というか、忍法帖が伝奇小説やマンガや後のライトノベルに与えた影響は大きいんだろうなあ。