「天国に涙はいらない 10 妹兄山腐女子庭訓」 佐藤ケイ (電撃文庫)

悪魔っ娘・たまは罪の償いをするのに自らの魔力を使えないものかと特訓をはじめる。
偶然たまと知り合ったD級悪魔のペデラスティリアは、たまの膨大な魔力を利用しようとたぶらかして…。
2人の悪魔シスターズで贈るシリーズ第10弾。

初っ端からあほうなパロディネタが炸裂しており、てっきり”でぃあぼりっく☆しすたぁず”の脳天気なバカ話になるのかと思いきや、
後半はたまの背負った罪とその償いに焦点をあてたシリアス話に。
これまで、賀茂君の優しさとかアブデルの萌えオタっぷりで誤魔化されていたその部分を真正面から描いてました。
罪の意識と贖罪への葛藤。純粋さと弱さゆえに陥ってしまう事態。
たまの切々とした悲痛な内面描写に感情移入させられ、そして終盤は読みながらマジ泣きでした。
わたしはこのシリーズで毎回のように泣かせられそうになってるんですけど、ここまで涙々モードにはいったのは5作目の幽霊編以来ですよー。
いやあ、まいったなあ、もう。

今回、たまちゃんがお話の中心になってしまっているためか、ゲストキャラの悪魔っ娘・ペデラスティリアの扱いがあまりよくないのは残念かも。話の都合上そのへんは仕方ないかなあ。まあ、再登場もできそうな終わり方になってるので、続編に期待したいところ。律子との仲も良さそうだし。
毎回メタ的に取り扱われる萌えネタは、今回はボーイズラブ。まあまあ笑えはしたけど、ちと弱いかな。
聖霊狩り」の吉野さんくらいのパワーが欲しかった。あと、熾天使vs小悪魔の熾烈極まる戦いは最高。

ギャグの部分と後半のシリアス展開のかみ合わせがあまりよくないし、全体としてはちょっとバランスが悪い作品になっちゃってるかなあとも思いますが、
シリーズ1作目から引っ張ってきた”悪魔っ娘たまの贖罪”に1つの答えを出したことや、
少女の葛藤と成長の物語に涙させられてしまったことに心から満足しました。良かった。