「パイド・パイパー」 ネビル・シュート (創元推理文庫)

何の力も持たない老紳士が、旅先で知り合った年端もいかない子供たちを連れ、戦時下のフランスを旅するというだけのお話。

年寄りの苦労も知らず、泣いたりぐずったり熱を出したりする子供たち。悪化していく戦況。
列車は思うように動かず、イギリスへ辿りつく望みは次第に薄れていく。爺さんの苦悩と責任感。
戦争を理解しきれない子供の無邪気さが時に腹立たしく、でも元気に遊びまわる姿は微笑ましい。
そんな子供たちを守るために、忍耐強く彼らの世話をし続ける老紳士。増えていく同行者(子供たち)。
道中出会う人たちの善意や、あるいは自らの足と機転にて、戦禍の中で待ち受ける困難を彼らは1歩ずつ乗り越えていく。

冒険小説の類にしては派手さはまったくなくて地味な作品かなあと思いますが、とても面白くて素敵なお話でした。
お薦めしてくれた久我先生に感謝。