「霧舎巧 傑作短編集」 霧舎巧 (講談社ノベルス)

霧舎巧の著作としては11作目にして初の短編集。
霧舎学園とのリンクはほんの少しだけなので、実質は<あかずの扉研究会>シリーズ作品。

傑作かどうかはともかくとして、普通に本格の短編集として楽しめましたよ。
霧舎作品はミステリ部分のトリックやプロット自体はわりと面白い人なので、
キャラクタやストーリー展開のツッコミ所が減る分、短編向きの人なのかも。

「手首を持ち歩く男」のいかにも思わせぶりなプロローグ部分が実は…というところだとか、
「紫陽花物語」におけるエクスキューズだとかのかわいげのあるところがなんか結構憎めなかったりする。

「動物園の密室」は御手洗潔パスティーシュ
わたしは本家を読んでないので御手洗ものとしてどうこうなんてさっぱりわからないのだけど、これは面白かった。
これ以外の各編で探偵役を任されている後動よりも、この短編の御手洗の方が魅力的な気がするのはどうかと。

「まだらの紐、再び」は毒蛇の所在を調べるところの不自然さを除けばなかなか良い。

「月の光の輝く夜に」生ぬるいラブストーリーが急にミステリっぽい妄想じみたオチに落ち着く作品で、
別に面白くはないんだけど、これを霧舎らしいなあと思えるようならあなたも立派な霧舎マニアックス。

最終話「クリスマスの約束」で明かされる意図にはちょっと驚かされますた。
あれとこれがリンクしているのか!?という物語的なことだけでなく、
(以下反転)霧舎巧というPNの名付け親が島荘で、作中の霧舎巧(カケルのPN)が御手洗潔命名だなんて、
面白い趣向ですよね。