「仮面劇場の殺人」 ディクスン・カー (創元推理文庫)

ディクスン・カーの晩年の作品。新訳です。

カーに限らず、古い海外ものを読んでいると50〜60代の男女のロマンスなんかが普通に書かれていて、そのへんお国柄なのかなーとか思ったりして。
この作品も喧嘩別れしたけど離婚はしてなかった2人が20年ぶりに再会して…という話がメインストリームで、
それを彩るような形で演劇場における殺人事件が描かれている。

わたしの基本的なスタンスは、本格ミステリにおける物語要素はシンプルなほどいい、というところにあるので、
そういう意味ではこの作品はペケなんだけど、でも読み終わってしまえばまあこれはこれでいいかなと思ってしまったり。
しょせんソープオペラだと思うんだけどねえ。なんか深夜に放送された古いロマンス映画をつい見てしまったような微妙な満足感。
長いお話の中で殺人は1つだけ、しかもそのトリックがこれまたお茶目で思わず吹き出してしまいました。

そういえば、フェル博士ものを読んだのは初めてなんだけど、ヘンリー・メリヴェールに比べると随分とエレガントな紳士だなあと思った。
まあ、どっちが好きかというと、傍若無人で下品なHM卿の方かな(笑)