東川篤哉 「もう誘拐なんてしない」 (文藝春秋)

ひょんなことからヤクザ「花園組」の親分の娘と関わることになった大学生・翔太郎。
妹の病状悪化に涙する絵里香に翔太郎は言う…「俺がおまえを誘拐してやろうか?」
 下関と門司港──関門海峡を舞台に繰り広げられるドタバタ誘拐ミステリー。
東川作品ではおなじみの脱力系なかけあいは本作も健在。
九州弁を使う奴がいたり、地方色がよく出ているのも作品のとぼけた味わいを深めている。
もちろん広島カープネタもあるでよ。
ヒロインに手を出そうとしてはあっさりかわされる翔太郎の三枚目っぷりが善き哉。
もう一人の主役・皐月のパートでは、花園組の連中の間の抜けたキャラクタっぷりが楽しい。
娘を溺愛するパパ・花園周五郎の脳内イメージが瀬戸豪三郎*1になってしまったワタクシ、随所で噴き出しまくりですよ!
いや、「瀬戸の花嫁」好きなミステリ読みならきっとわかってくれるはずw。
 狂言誘拐を図る側と身代金を払う側、二つの視点と思惑がすれ違い、最後に本格ミステリな捻りをつけて物語は着地する。
おー、そうきたかー。

もう誘拐なんてしない

もう誘拐なんてしない

*1:from「瀬戸の花嫁」 瀬戸内組の組長にしてヒロイン燦の父。アニメ版CV:三宅健太