小林めぐみ 「魔女を忘れてる」 (富士見書房 Style-F)

「魔女が帰ってきたんだ」旧友の言葉に蘇る忌まわしい記憶。
町を騒がす殺人事件は本当に……あの魔女の仕業なのだろうか?
 「食卓にビールを」とは作風も何もかも違う現代ホラーな一品。
虐待に過保護といった歪んだ家庭環境のもと、必死に自分を守って生きていく主人公たち。
いくら振り払っても切り離そうとしても消えてくれない傷痕。
苛立ち、過去から蘇ってくるものに慄き、次第に追い詰められていく路洋。
三人で一緒と決め、それだけで完結しようと願う朗人と双子の姉妹・佐保と菜保にも狂気と幻想の罠がひたひたと迫る。
真夏の熱気。心を惑わす匂いの描写。真綿でゆっくりと首を締められていくようなイヤな気分を存分に味わえる。
双子の奇妙な壊れっぷりも読み所の一つ。
ミステリおよび幻想ホラー好きな人にオススメしたい。

魔女を忘れてる (Style‐F)

魔女を忘れてる (Style‐F)