みおちづる 「ナシスの塔の物語」 (ポプラ社)

砂漠の町にもたらされた新しい技術(テクノロジー)。
生産性を大幅に向上させる”はぐるま”はナシスに生きる人々の暮らしを変えようとしていた……。
 「少女海賊ユーリ」の作者のデビュー作ということで手にとってみた。
パン職人である父のもとで見習いとして働く少年リュタ。石拾いの青年トンビとの交流。厳しい修行の日々。新しいものへの憧れ。
リュタの焦りや過ち、それを乗り越えての成長が描かれ、さらにナシスの町の変容をとおして人と技術/人と自然のあり方までもが語られる…。
様々な余韻を心のうちに残していく、実に味わい深い物語でありました。
拾い集めた石を一つ一つ積み上げ、ついには地平の彼方まで見通せる塔を作り上げてしまったトンビ。そんな彼の一番の理解者となったリュタ。
二人が笑いあって空を見上げるラストのなんと晴れやかなこと。
傑作。

ナシスの塔の物語 (青春と文学)

ナシスの塔の物語 (青春と文学)