米澤穂信 「遠まわりする雛」 (角川書店)

春休み、千反田えるに頼まれ『生き雛』まつりの手伝いをすることになった折木奉太郎は…。
表題作ほか、全七篇収録の「古典部」シリーズ短編集。
 前半の三つは「氷菓」から「愚者のエンドロール」までの間にあたる話。
「心あたりのある者は」から「クドリャフカの順番」以降の話になる。
折木と千反田のやり取りを中心に福部里志伊原摩耶花を加えた四人の関係の変わり様。
まさか、このシリーズでこんなセンチメンタルな気分にさせられようとは……。
最終話の折木の呆然とした感じと千反田の想いの込められた台詞が残す余韻にほうっと溜息。
遠まわりする雛」は別格として、読んでてもっとも感心したのは「心あたりのある者は」。
ケメルマン「九マイルは遠すぎる」式のロジックワークに挑み見事モノにした佳作。これは西澤保彦の全盛期にも負けない出来なんじゃないかな。
晴着を見せびらかしたいとのたまったり、折木と二人で閉じ込められてみたり、千反田さんの可愛さ爆発の「あきましておめでとう」も楽しい。
…ああ、挿絵がほしかったなあ。
 や、もう、本編がイラスト無しなのは仕方ないと諦めるので、いいから古典部をコミカライズしてくれよ。
千反田の晴着が! 生き雛が! 絵で見たいんだ!


シリーズ感想:
「クドリャフカの順番」
もえたん 萌える探偵小説」内:「氷菓」&「愚者のエンドロール」
「クドリャフカの順番」

遠まわりする雛

遠まわりする雛