秋梨惟喬 「もろこし銀侠伝」 (東京創元社)

凄腕の侠客でもある李小遊が毒にあたって死んだ。薬屋が疑われるが…。
第三回ミステリーズ!新人賞受賞作「殺三狼(しゃさんろう)」ほかを収録したミステリ短編集。
武侠小説にしてミステリーといえば皇城一夢「風月綺」が思い出され…って富士ミス好きしか知らないような作品のことはさておき、物珍しさに惹かれて読んでみた。
三人の敵を同時に倒してしまうという秘術”殺三狼”の使い手であり、毒見なしでは飲食物を口にしなかったほど身の安全を気にかけていた男がどうして毒死したのか?
 ある一点の解明が事件の全体像をつまびらかにする。武侠ものならではの真相にほうほうと唸る。
「殺三狼」のほか、巷間を騒がす連続変死事件を追う「悪銭滅身」には感心させられた。
ミステリとしてはなかなかユニークな一品であるといえよう。
しかしながら、武侠小説としては正直期待はずれ。活劇要素や登場人物の魅力が物足りなさすぎ。
事件の聞き込みなんか程々にしてもっと派手な展開を見せてくれてもよかろうに。むー。
そういうのを楽しみたいなら素直に金庸を「秘曲 笑傲江湖」を読めということか。

もろこし銀侠伝 (ミステリ・フロンティア)

もろこし銀侠伝 (ミステリ・フロンティア)