シャーリイ・ジャクスン 「ずっとお城で暮らしてる」 (創元推理文庫)

世間や村人の視線から隠れるように、大きな屋敷の中でひっそりと暮らしている姉妹とその伯父。
だが、静かな生活は従兄の訪問によって…。
一家を襲った毒殺事件。犯人として疑われた姉のコンスタンス。
毒によって健康を奪われ、また心の安定も失いつつある伯父のジュリアン。
一見して穏やかで幸せそうな、だが三人きりで閉じてしまっているせかい。
語り手のメアリにとって外界は拒絶するべきもの──他者の悪意に満ちたおそろしいせかいなのである。
メアリが行うおまじないの数々が、屋敷の様子や小道具(残された食器だとか人形だとか)の描写のされ方が、無垢で儚くてそれでいて壊れている姉妹が、いちいち不安をかきたてる。
読んでいる間中ずっと心の奥がざわざわしている。そんな一冊でありました。

ずっとお城で暮らしてる (創元推理文庫)

ずっとお城で暮らしてる (創元推理文庫)