米澤穂信 「インシテミル」 (文藝春秋)

破格のバイト代を条件に行われる”人文科学的実験”。
人を殺せば殺害ボーナス。殺害犯を言い当てれば探偵ボーナス。
十二人の参加者、期間は七日間、閉じられた空間での殺人ゲームの行く末は!?

作者のこれまでの作品とは異なり(おそらくは意図的に)キャラクター小説的な良さを極力廃した書き方がなされている。
天然気味のお嬢様・須和名祥子*1をうっかり気に入ろうものなら痛い目を見ること必至、そんな覚悟をもって読み進めるのが乙女のミステリ者のたしなみ。
古典部や小市民シリーズのような作品を期待している、とくに”ミステリ慣れ”していない読者に今作どう評価されるのか、わたし気になります。
疑心暗鬼を誘うルール、各人に用意された各種”凶器”、ついに発生する殺人、その連鎖。
「え? これはもうちょっと上手く設定できたんじゃないかなー」なんて思っていたところがまさに騙しのツボで、結果的には各事件の真相をまったく見抜けずじまい。
見事に目をそらされてしまった。
黄金時代の古典から新本格へと受け継がれてきた一連の”孤島ものミステリ”への一つの回答。
作品に散りばめられたミステリ的なガジェットの扱い方や”空気の読めないミステリ者”と自嘲する探偵役の立ち位置。
「(ミステリに)淫してみる」と宣言しながら決して素直には愛情をあらわさない。
つまり、米澤穂信は本格にツンデレ だったのだー!(どーん

インシテミル

インシテミル




*1:祥子さま!!?