石崎幸二 「首鳴き鬼の島」 (東京創元社)

《首鳴き鬼》という怪談の取材のために訪れた孤島で巻き込まれた連続殺人。
腕を切断された死体。館に響き渡る鬼の鳴き声。見立て殺人の真相は!?
 「袋綴じ事件」の刊行から早五年。いやー、待たされた、待たされた。
長らくの沈黙の間に既刊の四冊も品切れになってしまって、半ば消えた作家になりかけてましたよ。
ファンとしてはとにかく刊行されたそのことをまず喜びたい。
「軽妙な会話と寒いギャグ、でもミステリ部分は意外にしっかり」というのがこれまでの石崎作品なのだけど、今作は「オチャラケを自制し真面目に本格してみました」という余所行き仕様。
ただし、ファンならば、会話のはしばしにそれとなくしのばされているものを感じとることも可能。
嗚呼、この事件を担当するのがミリユリ&石崎だったら!(稲口の役回りを石崎がやったら何かと台無しになってしまったかもしれない)…講談社のシリーズも復活してくれないかなあ。
孤島+見立て殺人で《○○の○○》というテーマも描かれる。
通常《本格ミステリ》とは相容れないものとされる《○○○○○》を逆手にとったどんでん返しが最大の評価ポイントであろう。

首鳴き鬼の島 (ミステリ・フロンティア)

首鳴き鬼の島 (ミステリ・フロンティア)