田代裕彦 「赤石沢教室の実験」 (富士見書房)

芸術家・赤石沢宗隆の最後の内弟子たち──”赤石沢教室”が兄の自殺に関わっていた!?
片桐あゆみは彼ら彼女らを殺す計画を想像することで心の安定を図ろうとするが……。
 デビュー以来、富士見ミステリー文庫にてミステリなライトノベルを書き続ける作者の初・四六判は富士見書房Style-Fの一冊。
おおう、いつかはミステリ・フロンティアあたりで書くこともあるだろうと密かに期待していたら、富士見みずからこういう本を出してきましたか。
本の装丁/有栖川氏の推薦文/あらすじから立ち上る”ミステリ臭”につい頬が緩んでしまうアタクシであります。
赤石沢宗隆が囚われた《漆塗りの闇》といふ狂気。彼の遺した最高傑作とは。一人、また一人と殺されていく少年少女……。
青春ミステリなあまやかさは微塵もなく、語り口は終始冷ややかなまま。情け容赦のない惨劇っぷりにしびれるるるぅー。
あゆみを見守る奇妙な語り手たる”僕”の存在をどう判断するか。
わたし自身はかなり早い段階で全体の構図にアタリをつけてしまったので「やー本格ですね」とニヤニヤしながら読み進めるかたちになったんだけど、
うまくミスリードに乗せられた人は真相に驚かされたんじゃなかろうか。
まさに田代裕彦の新境地と呼ぶにふさわしい逸品。
これを機に”本格ミステリ”ファンに田代裕彦が発見されるといいなー。「平井骸惚」や「キリサキ」がもっと読まれてくれると嬉しい。

赤石沢教室の実験 (Style‐F)

赤石沢教室の実験 (Style‐F)