桜庭一樹 「青年のための読書クラブ」 (新潮社)

 異国から来た修道女がひらいた乙女の園──聖マリアナ学園。
”はみだし者”の集う読書クラブによって書き継がれてきた、学園史を彩る事件の数々とは…。
 麗しき少女たちの楽園も桜庭一樹の手にかかれば風刺と哀愁にあふれた諧謔学園小説へと早変わり。
安穏とした日々を送りながらも刺激を求める少女たちが作り上げる偶像──《王子》に《ロックスター》、怪盗《ブーゲンビリアの君》。
大衆の熱狂ぶりと祀り上げられた者の実際とのあまりの温度差に読書中何度噴き出したことか。
そんな珍事件の中にも思春期の1コマ/1コマが紛れ込む。楽しくもすこぉしだけ切ない女学生ライフ。
ちょっと気取った文体や自らを「ぼく」と呼称する少女たちの在り様も味わい深くて善き哉。

 それから、第二章「聖女マリアナ消失事件」は、最後の読書クラブでの一幕を一弥とヴィクトリカに置き換えれば、
そのまま「GOSICK s III 秋の花の思い出」の一篇として組み込めよう……と感じたことも記しておく。
もし、ヴィクトリカが聖マリアナ学園にいたなら……と想像してみるのもまた楽し。

青年のための読書クラブ

青年のための読書クラブ