吉田親司 「8ガールズ オデッセイ」 (GA文庫)

土星へと向かう惑星間航行汎用宇宙船《シャドーレス・シャングリラ》。
冷凍睡眠から目覚めたクルーたちは、招かれざる9人目──謎の少年を目にすることに……。
 かの名作「11人いる!」風味な宇宙船劇が読めるかと期待して手にとってみた。
木星が崩壊した後の太陽系。人類とプルラリズム眷族との戦い。
船内への侵入者。航行を管理するコンピュータ《ビッグ・ママ》への不審。
一体何が起こっているのか──そもそも、わたしたちは本当に土星へ向かっているのだろうか?
 これは面白かった。
8人の娘っこの人となりと生い立ち、現状の混乱と舞台背景が平行して語られ、それらが絡まり導かれていく1つの終焉はなかなかに衝撃的である。
ヒロインたちに対してどこか突き放したような冷ややかな感触があり、キャラクタへの感情移入がしづらい作品ではあるのだが、
ああいう(SF作品の持つある種の”いやらしさ”に彩られた)ラストに持っていくためには、これで良かったのかもしれない。
個人の意志や奮闘によってではなく、権力側(あるいは欺瞞に加担していた側)の論理にそった展開をなぞるのは物語上仕方ないにしても、もうちょっと反抗のカタルシスが欲しかったなという気はする。

8ガールズ オデッセイ (GA文庫)

8ガールズ オデッセイ (GA文庫)


他作品感想:
「血闘絶対国防圏(上)〜邀撃の巻〜」
「(下)〜反撃の巻〜」
「鉄車帝国の女囚」