石持浅海 「人柱はミイラと出会う」 (新潮社)

人柱、黒衣、お歯黒、参勤交代……。
伝統的な習俗・制度が形をかえて生き残る──パラレル現代日本を舞台に綴られる”非日常”ミステリ短篇集。
 専用の部屋に篭り外界から隔絶されることで工事の安全を祈願するという《人柱》。
昔と違って死ぬことはないけれど、長期間の孤独と無に耐えられるものだけがなれる特別な儀礼的職業なのである。
その他、政治の世界に無くてはならぬ《黒衣》制度や警察に協力する《鷹匠》と警察鷹、知事の参勤交代などなど、
現代に紛れ込んだあれやそれやが奇妙かつユーモラスな味わいをかもし出しており、非常に興味深く読めた。
そして、このパラレル日本ならではの謎かけと解答の数々。
特に表題作「人柱はミイラと出会う」と「黒衣は議場から消える」は傑作。
他の話もミステリとしての質はともかく設定の妙で楽しませてくれる。
生真面目すぎない石持浅海ってのも魅力。
あー、厄年休暇*1とか現実にあってもいいよなあ。

人柱はミイラと出会う

人柱はミイラと出会う

*1:大厄の一年間休ませてくれる制度