中村九郎 「アリフレロ キス・神話・Good by」 (スーパーダッシュ文庫)

神話の遺産”αキス”が狙うのは的球とその持ち主。
”ローテーション・キス・ショット”なるゲームに巻き込まれた少年少女の運命は…。
一体何を読んだり観たりしたら中村九郎のような作劇センスが培われるのか。
設定やストーリーは他の異能バトルものでもありそうな形であるのに、最初から最後までどこかしらズレていて、それがえもいわれぬ酩酊感を呼び起こす。
「左腕に神話が降ってくる」とのたまう小桜冬羽。軽妙浮薄な元・ビップの足利寿。三井川正人と”視点の持ち主”である千里眼。神話の狩人たる黒園葵。
主人公サイドの4人とも変な人だし、敵サイドに至っては皆が皆なにを考えているのかさっぱりわからない始末で、作品の中にまともな感性の持ち主が誰一人存在しないパラダイス。
彼らのやっているわけのわからない生き残りゲームが、でも面白いのだ。そして、ちょっとだけ切なかったりもする…。
「黒白」や「ロクメン」であったような観念的な部分を控えめにして異能バトルの形をなぞったぶん、格段に世界に入りやすくなったし、面白くもなった。
これが正統進化なのか、あるいは奇才と目される独自色を薄れさせていってしまうのか。次回作にも注目ですな。


感想:
「ロクメンダイス、」
「黒白キューピッド」