マイク・レズニック 「キリンヤガ」 (ハヤカワ文庫SF)

かつての原生的な生き方を取り戻すために作りあげられたキクユ族のユートピア《キリンヤガ》。
サバンナに生きるキクユ族の未来に待ち受けるものとは…。
 原生的な暮らしと現代科学・文明の享受。伝統と合理主義。個人と社会。
今を生きるものたちの幸せと伝統という名の価値を秤にかけたとき、果たしてどちらが重いのか。
キリンヤガに侵入してこようとする、あるいは内側から発生する異分子を拒否し続ける、この物語の語り手・コリパの頑なさは正しくもありながら同時に間違ってもいる。
避けられない変化とそれによって失われてしまうものへの哀悼。
この作品からの問い掛けに何らかの答えを見出すことはとても難しい。
積み重なる寓意の深さにどこまでも沈み込んでいくような一品。

キリンヤガ (ハヤカワ文庫SF)

キリンヤガ (ハヤカワ文庫SF)