甲田学人 「断章のグリム I 灰かぶり」 (電撃文庫)

神の悪夢──泡禍に巻き込まれた人を救い怪異と戦う”断章を持つ者たち”との出会いによって、白野蒼衣の平穏な日常は崩れ去った。
午後六時の放送を聞きながら階段を下りた者は惨殺される。それは灰かぶりの泡禍…。
 角川グループ主催「ライトノベルアワード2007」のミステリー部門にノミネートされてたので、ラノベ・ミステリ研究家(自称)としてはこれは捨て置けぬと読んでみた次第。
ぬぬぬ、これのどこが”ミステリー”なのか。
純正ホラーなら広義のミステリーとして渋々承知しなくもないが、こりゃ異能バトルものじゃないのかコノヤロウ。
これだから電撃の言うミステリーは富士ミス以上に信用ならぬ…。ぶつぶつぶつ…。
とまれ作品そのものはなかなかに読み応えのある一品である。
”泡禍”なる超常的な怪異の酸鼻極まる内容が大変よろしい。
目をくりぬかれた女性に襲われる場面や火葬場での惨劇の、読んでて気持ち悪いことといったら、もう!
怪異をメルヘン見立てにして修飾性を高めてあるのもポイントの1つ。
自らの手首をカッターで切り裂き「私の痛みよ、世界を焼け!!」と泡禍に立ち向かうヒロイン・時槻雪乃の姿のなんと非力で痛々しいことよ。