桜庭一樹 「GOSICK s III 秋の花の思い出」 (富士見ミステリー文庫)

風邪をひいて退屈をもてあますヴィクトリカのために一弥がもっていくもの──花と”花にまつわる昔語り”で綴られる連作短編集。
この表紙の美しいことよ。ヴィクトリカの愛らしい姿は今さら言及するまでもないとして、色彩豊かで細やかなデザインのドレス、紅葉に彩られた背景。
本を開けば計6着のお召し物に身を包むヴィクトリカ。もうイラスト眺めているだけでうっとり幸せ。武田日向は神。
わがまま雛鳥の世話をやく親鳥のような一弥の健気さ。それに素直に応えないヴィクトリカの可愛らしさ。
すれ違うアブリルやセシルの様子も微笑ましくってしょうがない。ああ、楽しい。
作者の”知恵の泉”ならぬ”物語の泉”から沸き出でた挿話の一つ一つも味があって面白い。
様式美という意味ではシリーズ中随一といってもよろしかろう。素晴らしい。