ヤマグチノボル 「描きかけのラブレター」 (富士見ミステリー文庫)

絵を描くことが好きなユキオ。綺麗でわがままで意地っ張りな円。不器用で素直になれない2人の恋の行方は…。
作者曰く『等身大の恋愛物語』な日立三部作の一作目。
桜庭一樹の「地方都市シリーズ*1よりも先にヤマグチノボル茨城県日立市を舞台にした連作をスタートしていた! なんて煽りを思いついてみた。
「遠く6マイルの彼女」の京子もなかなか面倒くさいヒロインなのだが、今作の円はそれ以上。
意地悪したり、両想いになってからも不機嫌が常態で可愛らしいところを滅多に見せてくれない。そんな態度とっておきながら気持ちをわかれって無茶なこと言うなあ。
どちらも一途で相手への想いは決してぶれていないのに、それが通じ合えないもどかしさ。
極端に戯画化されたラブコメである「とらドラ!」あたりとはある意味対極にある一品。
地味かもしれないけど、こういう落ち着いた作品も味わい深くていいものです。


参考:富士ミス四大青春小説