支倉凍砂 「狼と香辛料 IV」 (電撃文庫)

異教の神々の話を集めているという修道院を探しにやって来たロレンスとホロ。滞在している村と近隣の街との特殊な利害関係にまつわる騒動に巻き込まれ…。
村の権益を守ろうと奮闘する教会の娘。異教の神の存在と唯一の神への信仰との妥結点。麦農家から疑いの目で見られがちな職業である粉ひき屋。
舞台が辺境の村であるだけにこれまでのような手に汗握る物流/マネーゲームはないし、主役の二人も別段すれ違ったりはしないのだけど、
商人に農民、職工に聖職者、この世界で”働くもの”をしかと描くことで、地に足ついた世界観が読み手の前に少しずつ広がっていくかのようなストーリー展開がしみじみ良い。
かつての《さすらいの乙女醸造師》こと現・酒場の女将イーマのエピソードと豪快さが実に印象深い。
シリーズもすっかり安定飛行にはいったようだし、あとは完結までちゃんと漕ぎ着けてくれるのを祈るばかりですな。

狼と香辛料 (4) (電撃文庫)

狼と香辛料 (4) (電撃文庫)