三浦良 「再始の女王 抗いし者たちの系譜」 (富士見ファンタジア文庫)

数百年の眠りから目覚めた原初の魔王エルと黒き鏡。皇帝サラ・シャンカーラの前にあらわれたエルは魔力と世界の理を告げるが…。
 サラvsエル、帝都炎上、レンカン要塞での攻防戦──シリーズのクライマックスにふさわしい盛り上がり。
わりと無茶のある設定に若干苦笑する部分もなくはないけど、道中がこれだけ面白ければいいじゃないか。
どんな事態にあっても(ラジャスを前にしたときの内心の揺れ以外は)冷静沈着を崩すことのなかったサラが見せた憤怒。己を貫くこと、運命に抗うことにこだわり続けるラジャス。サラの下に集った者たちのそれぞれの奮闘。心の琴線にふれまくる展開がありまくり。特に《決戦を目前に怖気づいた弓兵に名も無き魔物が声をかけるシーン》は、人と魔物との共存──サラたちが築き上げてきたものが凝縮された名場面中の名場面ではなかったかと。
ワタクシ一番のお気に入りであるウィチィロポチトリ様が大活躍?なのもよござんした。
個々のキャラクタに目を向ければ外伝がいくらでも語れそうなだけに、ここでシリーズ一区切りというのはまだ早いよう。ああ、ウィチィ閣下とティアカバンの出会いの話とかレイくらいしか出番の無かった六輝星の活躍とか読みたかったなあ…。

再始の女王―抗いし者たちの系譜 (富士見ファンタジア文庫)

再始の女王―抗いし者たちの系譜 (富士見ファンタジア文庫)