桜庭一樹 「赤朽葉家の伝説」 (東京創元社)

赤朽葉家に嫁いだ千里眼の万葉。その娘で激しく嵐のような一生を駆け抜けた毛鞠。
祖母と母の生きた時代を遠く見つめる現代の若者・瞳子鳥取の旧家、製鉄で財を成した赤朽葉の一族、その三代にわたって語られる物語…。
 桜庭さん新たな扉を開いたんだ。「GOSICK」が終わったらたぶんこの開いた扉から向こうに旅立って、もう帰ってこないんだろうなあ……と思わせるほどの傑作。
高度経済成長期──新しい時代の波が押し寄せはじめた地方都市を舞台に幕を開いた物語は、ぼくらが幼い頃に見上げていた社会──80年代から90年代を経て、今の時代へと至る。
時代の流れに翻弄され、あるいは全力で抗いながら、生きて、そして死んでいった、少し不思議な一族の年代記
波乱万丈で豊穣な物語に圧倒されながら読了。
とても素晴らしく実に読み応えのある骨太な一品でありましたよ。
いろいろな人の生き様が描かれていた中で一番心に残ったのは万葉の物語。
”山の娘”という出自。千里眼。姑や夫、子らとのどこか不思議な、でも確かな情愛を感じさせる関係が印象深かった。


参考:地方都市シリーズ

赤朽葉家の伝説

赤朽葉家の伝説