桜庭一樹 「少女には向かない職業」 (東京創元社)

「あたし、大西葵は、中学2年生の1年間で、人をふたり殺した。」

刊行記念のサイン会にまで参加しておきながら1年以上も積んでいたのをようやく読了。
少女たちを見舞う理不尽で過酷な現実。
心の内に積み重なっていく忸怩たる思いが出口を求めてさまよい続け、やがて誰をも撃ちぬけなかった砂糖菓子の弾丸は少女の手の中で鈍色のバトルアクスへと形を変える。
語り手である大西葵の心の動きがぼくら読み手の魂を揺さぶる。切ない……どこまでも切ない物語でありました。
少女には向かない職業」と対をなす「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」、米澤穂信「犬はどこだ」に野村美月文学少女」シリーズまでもが一つの系譜としてスッとつながったような、感触(錯覚)を覚えた読後感。
大西葵と宮乃下静香のそばには……天野遠子がいないのだと。


参考:地方都市シリーズ

少女には向かない職業 (ミステリ・フロンティア)

少女には向かない職業 (ミステリ・フロンティア)