鮎川哲也 「りら荘事件」(創元推理文庫)

”りら荘”にて休暇を過ごすべく集った芸大の学生たちの間で起こる悲劇。
死体の側にトランプのカードを置いていく犯人の正体は…。
 巨匠・鮎川哲也の代表作の1つ。最初の刊行は1958年。
事件の動機などに時代性を多少感じたりはするものの、それほど古びてはおらず。
後の世の新本格ミステリに合い通じる部分も多く、なるほど「虚無への供物」級の傑作とまではいかないにしても、
フーダニット(犯人当て)ミステリの佳作であると納得の一品。
厳密なクローズドではないが犯人候補が限られている状況下で起きる連続殺人。
カードの謎や一部のトリックは見抜けても、肝心の真犯人は最後まで絞り込めずじまい。
小技の組み合わせで全体を形作る構成と伏線の妙味にうならせれましたよ。
それにしてもよくこんなに死なせたもんだ…。お見事です。
死人の多さと二条というキャラクタの扱いが何となく麻耶雄嵩「翼ある闇」を想起させるかも。
ちなみに”はじめての鮎川哲也”でありました。「黒いトランク」とかも教養のために読んだ方がいいのかしら。かしら。

りら荘事件 (創元推理文庫)

りら荘事件 (創元推理文庫)