うえお久光 「ジャストボイルド・オ’クロック」 (電撃文庫)

珪素脳によってリンクすることで家電に人格が生まれ、人と家電が共生するようになった世界。
探偵稼業を営むジュードのもとへとある依頼が持ち込まれ…。
 サイバーパンクSFっぽい世界を舞台にしたヒーローものな一品。
白のジャケットにネクタイ、頭にはソフト帽。相棒は喋る黒猫(型の家電)。
ピンチに陥っても軽口を絶やさず、飄々とした態度で困難に臨み、しかし自らの信念は貫き通す主人公ジュード。
渋味だとか哀愁とかはなくても軽ハードボイルドなヒーローとしての魅力はじゅうぶん。
こんなハイテク世界なのに得意技は柔道だというアナログ感もいい味出してる。
話の前半こそ、世界設定をかみくだき登場人物の紹介をするのに手一杯でいまひとつテンポがよろしくないのだけど、動き始めてからはもう面白い、面白い。
悪魔のミカタ」ドッグデイズ編を思い起こさせるハイパーアクションが素晴らしかった。特に遊園地での対決シーンな。
ジュードとアル(猫)の軽快なやり取りと肩の力の抜け具合がシリアスな展開をうまいこと中和してくれて、作品全体の空気感が実に良い。
ちょっと「ルパン三世」っぽいところもあるよね。
うえお作品にしては若干ヒロイン萌えが物足りない感があるものの、そのへんはモテモテ状態でジュードくんたいへんっ!?な続編に期待だ。