妹尾ゆふ子 「ロマンシング サガ ミンストレルソング 皇帝の華」 (スクウェア・エニックス)

バファル帝国、レリア四世の時代。
若き皇帝の側には常に近衛隊《皇帝の華》と隊長・ローザの姿があった…。
 原作(ゲーム版)で吟遊詩人によって語られる伝承「ローザとアクアマリンの語り」を元にしたノベライズ版「ロマサガ」。
傀儡の皇帝として真の権力者である皇太后に怯える日々を過ごしていた少年皇帝。
その孤独と葛藤。
常に皇帝に付き従い、身を挺して暗殺者たちから彼の命を守る少女戦士・ローザ。
そんな2人を中心に、彼らを取り巻く人々の運命と帝国の行く末を、10年以上に渡るスパンで描いた物語は読み応え十分で、予想以上に面白かった。
主人公であるレリアの成長譚としても読ませてくれるし、何といってもローザや《皇帝の華》たちの力強さと献身が静かな感動を呼び起こしてくれる。
”神が人々のすぐ側に在る” そんな原作の世界観をうまく小説世界に翻訳して、且つこれほどの群像劇を見せてくれたら、ロマサガ信者的には”傑作”認定ですよ!
 もともと”存在を仄めかされるだけでゲーム内では実際には語られない/明かされない”エピソードがたっぷりあって、サイドストーリーをいくらでも作れそうなのが、このシリーズの特徴の1つ。
かなりノベライズ向きな作品だと思うんだけど、不思議と縁がないのよねー。
小説として1冊にまとまったのってこれが初めてなんじゃないかな。
…ともあれ、ロマサガ1(ミンストレルソングに限らず)好きなら読んで損はない逸品。
ああ、またゲーム再開したくなっちゃったよう。