鈴木大輔 「空とタマ -Autumn Sky, Spring Fly-」 (富士見ミステリー文庫)

7回目の家出を決行した天野空。ところが避難先の倉庫にはすでに先客がいて…!?
 最近のファンタジア大賞デビュー組の中では一番の売れっ子作家が富士ミスに進出。
なんだよー「二ノ宮くん」のようなラブコメでも書かせる気か初体験Projectっ! という予断は良い意味で裏切られました。
倉庫の占有権ととあるものを巡っての攻防(ケンカ)、言葉での駆引きを経て、やがて主人公たちの過去と内に抱える想いが明らかになっていく構成。
なるほど、これは確かにファンタジア文庫よりも富士ミスのカラーの方がよく似合う。
謎解きものではないけれど、正体の知れぬ相手の姿を行動・言動からいろいろ推理しながら対応を考える主人公の姿勢は確かにミステリーに通じるものあり。
そして、胸を打つラスト。
「さよなら、いもうと。」といい「月の盾」といい、一冊完結型の青春ラノベ文学の良作が最近続いてて、善き哉、善き哉。