新井輝 「さよなら、いもうと。」 (富士見ミステリー文庫)

交通事故で死に、3日後に生き返った妹。そんなトココの願いは「お兄ちゃんと結婚したい」…。
妹の死と再生、秘めた想いを知ることによって主人公・ヒロシの内に生じた複雑な想い。
お兄ちゃんが好きだという妹と触れ合いながら、どんな答えを出すべきなのかを迷い、モラトリアムな自分のままでいいのだろうかと焦る。
主人公には非常識な人のように思われていた母がかけてくる言葉が胸を打つなあ。
幼なじみの可愛らしさにほんわかしつつ、悪友のおせっかい焼きと主人公の鈍感さに苦笑。
そして、妹との奇妙でどことなく切ない関係と、母を加えた家族3人の絆の描き方にしんみりさせられる。
心の奥の深いところを静かに揺さぶってくれる傑作でありました。
1冊で綺麗にまとまっているところもまた良し。
きゆづきさとこ絵も素晴らしい。
文句無しに今年のベスト候補。