米澤穂信 「犬はどこだ」 (東京創元社)

病により都会を離れ、地元で私立探偵をはじめることになった青年・紺屋。
初めて請け負うことになったのは失踪人捜しと古文書の解読。
物語に滲み出る理不尽な現実と挫折感。
これまでの青春ミステリで描いてきた、若さゆえの驕りと失敗や想いのすれ違いといったものとはまた一味違った苦々しさが後を引く。
依頼された案件を追う二人の若者。平行して語られる二つのパートを読みながらこんな展開になるのかなと予想したその斜め上を行く真相。そしてラスト…。
素晴らしい! …と思うのと同時に刊行時にとっとと読んでしまわなかったことをちょっとだけ後悔。
だってー、「夏期限定」を先に読んじゃってると……ねえ?*1
ライトノベルからデビューした著者の新境地。
どちらが好きかと問われたら、そりゃあ「古典部」シリーズの方なのだけど、こっちの方向(一般向けミステリー)も期待してますよーう。
 ところで、帯に書いてある「振り返らず。来た道から逸れないように。」という文章。
読む前にそれに対して抱いた印象が本文で完全にひっくり返りました。この帯は凄い。

*1:察してくだされば幸い