山科千晶 「エンジェル・ウィスパー」 (メディアワークス)

失踪した弟を探すための手掛かりは、”エンジェル・ウィスパー”という謎の言葉…。
電撃ハードカバーの1冊。
話の流れはサスペンス調で、家族愛を中心にすえた物語でもあり、オカルト風味の異能力まで出て来る。
これこれこんなジャンルの作品だと、ライトノベルだとも一般向けエンタメだとも単純に分けられないハイブリッド感。
作品内で配される様々な出来事が渾然一体となって”エンジェル・ウィスパー”というキーワードの元に収束していく物語は実に読み応えあり。
主人公・鷹次といなくなってしまった弟・純也、2人の父、死んでしまった兄。彼らそれぞれが抱える互いに対しての複雑な感情。
傷ついた心を抱え、手を伸ばそうとして、すれ違ってしまった悲しさ…。
有川浩と共に電撃の新たなる地平の到来を予感させる。そんな作品。