「消えた探偵」 秋月涼介 (講談社ノベルス)

秋月りょーすけ1年半ぶりの新刊にて4作目。
あれれ、今回はイラスト付きじゃないの? 絵付き路線は「月長石」&「紅玉」のシリーズだけなのかしらん。
強迫神経症・多重人格・悪魔憑き・等々、精神疾患の患者が集められた施設を舞台にした作品。
登場人物がことごとく何らかの精神疾患を抱えていたり、彼ら彼女らの異様さを逐一描写していく展開、そして登場人物すべてに渾名をつけてるあたりの偏執的なこだわり方がいかにも秋月作品らしいなあ。
語り手である主人公が(主観人物として)信用ならない者なので、本文に書かれていること、主人公の認識がどこまでが正しいのか?あるいは妄想でしかないのか?読んでいて判断つきかねるというのが本書のポイントの1つ。
作品の雰囲気は綾辻行人「フリークス」に近い。
タイトルに探偵ついてるからミステリなのか? 主人公の認識してる異世界転移が妄想じゃなかったというSF的なオチがつくのか、あるいはサイコホラー展開? 最後の最後まで一体何が起こるのかさっぱりわからないまま読んでましたよーう。ってな感じで終章に突入…。
おおお、これは結構な良作、しかも本格ミステリなサプライズを秘めた作品になってるじゃないですかっ!?
 前3作が本格ミステリとして評価するには弱い作品だったこともあって注目度は低いかと思われるのだけど、本格ミステリ愛好家なら読んでおいてもらいたいなーという一品に仕上がってます。
秋月タン著作ごとに着実に腕を上げてきてるよね。


前作感想:「紅玉の火蜥蜴」