「SHI-NO -シノ-黒き魂の少女」 上月雨音 (富士見ミステリー文庫)

殺人事件や死といったものに惹かれてしまう小学生の志乃ちゃんと幼なじみである大学生の”僕”。ネットの自殺サイトを発端にした事件に2人が見るものは…。第5回富士見ヤングミステリー大賞・最終選考作。

志乃ちゃんと”僕”のどこか奇妙な保護/非保護の幼なじみ関係や、意外にミステリ色の濃い物語が面白い。
生の意味を問い人の死を知ろうとする志乃ちゃんの思考と感情の描写が森ミステリィっぽくて、この世界のどこかに眠っている十二柱の森博嗣チルドレンのうちの新たなる御柱富士ミスに降臨〜という印象もなくはないものの、そのへんはヒロインの魅力と話の面白さで相殺。
リッパーさんの好みでいえば、先に刊行された受賞作3つよりも断然こちらに軍配を上げるなあ。
売れ線ではないのかもしれないけど、こういう作品が出てきてこその富士見ヤングミステリー大賞じゃあないのかっ。
ということで、田代裕彦とともに富士ミスの”ミステリー”を担う作家に育ってくれることを願いつつ、今後に期待。