「風月綺」 皇城一夢 (富士見ミステリー文庫)

文化大革命期の上海。
侠客党の工作員・風箔は少女・選杯をともない、後援者の富豪の屋敷を訪れる。
暗号を解き、宝探しを手伝えという依頼だったのだが…。屋敷にて殺人事件が発生する。

裏社会と政治・思想闘争的なものが絡み合った組織とキャラクタ設定のお話。こういうのを”武侠”風味というらしい。

今回の話のメインである殺人事件に関しては、わりと”本格ミステリ”の形式にのっとったまっとうなものに仕上がってる。
密室の作り方とかその解法や伏線は正攻法。
事件の背景は富士見ミステリー文庫にしてはかなりダークなもので、横溝風といった感じもあり。
そのへんはまあまあ楽しめる出来。
ただ、世界観と本格ミステリ志向との食い合わせはあまりよくなかったような気もするなあ。
だって、登場キャラに武術の達人どころか竜骨もちの仙人までがいたりするんですよ?
わたしとしては寧ろ、超絶能力を使ったぶっとんだミステリが読みたかったでーす。<「ブロークン・フィスト」の悪夢再びかよっ。
それから、この作者の文体がいまいち合わず。なんとも読みづらい。うー。描写と描写の隙間が大き過ぎだという印象。アクションシーンの描写もあまり上手くないよな。
萌え担当キャラの選杯はかわいいんだけど、作品の雰囲気からはちょっと浮き気味。